高貴な魂で異例の第一級昇格を果たしたシャトー
シャトー・ムートン・ロートシルトはボルドーを代表する5つの偉大なる1級シャトーのひとつです。
しかし、ボルドーワインの格付けが初めて行われた1855年、シャトー・ムートン・ロートシルトはなんと格付け1級から除外され、不本意な2級という判定がなされました。
これについて当時のシャトーの代表であったフィリップ・ロートシルト男爵は猛然と反発。恐ろしい不正があったと訴えましたがこの声はあえなく退けられてしまいました。
この判断に対して納得のいかないシャトー・ムートンは、自らのワインラベルに「我々は1級にはなれなかったが、2級であることを決して善しとはしない。我々はムートンなのだ」といった主旨の文面を常にかかげ、1855年の判断に猛然と怒りをあらわにし続けました。
実際、彼らが生み出すワインは他の1級シャトーと常に同等、あるいはそれ以上のクオリティを維持し続けたのです。
その結果、1973年、当時の農業大臣によって第1級への昇格が認められることとなったのです。この判断は1855年にボルドーの格付けが行われて以来、初めてかつ唯一の変更となったのです。
以降、ムートンのワインラベルには「今は1級となり、過去には2級であったが、ムートンは不変なのだ」と書かれています。
高い誇りと、あくなきワイン造りへの取り組み。
偉大なワインを生み出すシャトーの世代を超えた意志が伺えるムートンならではの素敵なエピソードです。
シャトー・ムートン・ロートシルトの「ムートン」は「羊」の意味ではないのです
シャトー・ムートン・ロートシルトと言うと「ムートン=羊」のイメージがありませんか?実際、たびたびエチケットには羊をモチーフにした絵が描かれています。
実はこの「ムートン」という名前は、「Motte de terre」という「土地の盛り上がった所、高み」という地形をあらわす言葉が元になっており、「羊」からきているわけではないのです。
最初の格付けでなぜ1級に選ばれなかったのか
1973年に第二級格付けから第一級に格上げされ、ボルドーを代表するシャトーとして君臨するムートン。彼らのシャトーが最初のボルドーワイン格付け(1855年)において1級に選出されなかったのにはいくつかの理由があるようです。
一つの理由は当時、ムートンの敷地の中にシャトーが無かったためと言われています。現在のシャトーは、格付けが行われた1855年から20年以上経った1880年に建設されたものです。
また、もう一つは19世紀当時、畑を所有していたのがイギリス人であったため。
もともと圧倒的な実力を誇っていたにもかかわらず、ワインそのものとは関係のない問題が邪魔をしていたようです。
|