1986年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス
ボルドー
1986年のボルドーは、第二次世界大戦以降で最大規模の収穫量を記録し、特に左岸のメドック地区で偉大なヴィンテージとして評価されている。暑く乾燥した夏がカベルネ・ソーヴィニヨンの優れた成熟を促したが、9月中旬から下旬の雨と一部地域の洪水により、メルロー主体のワインは希釈される傾向があった。収穫期は好天に恵まれ、赤ワインはアルコール度数が高く、タンニンが豊富で、長期熟成に適した力強いスタイルに仕上がった。左岸のメドック(ポイヤック、サン・ジュリアン、マルゴー、サン・テステフ)ではカベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインが濃密な色合いとしっかりとした骨格を備え、特にポイヤックのシャトー・ラフィット・ロートシルト、ラトゥール、レオヴィル・ラス・カーズ、サン・テステフのコス・デストゥルネルなどが傑出した評価を得た。マルゴーのシャトー・マルゴーも高品質だが、アペラシオン全体ではポイヤックやサン・ジュリアンほどの均一性はない。グラーヴやペサック・レオニャンでは、シャトー・オー・ブリオンやラ・ミッション・オー・ブリオンが構造のしっかりした赤ワインと優れた辛口白ワインを生産。右岸のサンテミリオンやポムロールではメルロー主体のワインが果実味豊かだが、左岸に比べ品質にばらつきがあり、シュヴァル・ブランやペトリュスなどのトップシャトーが高評価。甘口白ワインのソーテルヌ、バルサックでは、10月後半の雨が貴腐菌の発生を促し、シャトー・ディケムをはじめリッチでバランスの取れたワインが生産された。
ブルゴーニュ
1986年のブルゴーニュは冷涼で雨の多い夏がブドウの熟成を妨げ、収穫期の雨により多くの生産者が早摘みを余儀なくされた困難な年だった。コート・ド・ニュイでは、9月の好天を活用した遅摘みの生産者が高品質なピノ・ノワールを生産。ジュヴレ・シャンベルタン、シャンボール・ミュジニー、ヴォーヌ・ロマネなどで、厳格な選果を行ったドメーヌ(例:ドメーヌ・ニューマンのボンヌ・マール)がチェリーやトリュフのアロマを持つ優れたワインを生み出した。コート・ド・ボーヌのポマール、ヴォルネイ、サントネでも、選果を徹底した生産者が繊細な赤ワインを生産。白ワインはムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェのグラン・クリュ(モンラッシェ、シュヴァリエ・モンラッシェなど)で、トップ生産者がバランスの取れたシャルドネを生産したが、全体的にばらつきがある。シャブリは酸が際立つが、果実味に欠けるワインが多かった。
ローヌ
北部ローヌではシラー主体のワインが比較的成功し、エルミタージュ(シャプティエ、ポール・ジャブレ・エネのラ・シャペル)やコート・ロティ(ギガル)がタンニン豊富で熟成ポテンシャルの高いワインを生産。コルナスも力強いシラーが特徴。コンドリューのヴィオニエはアロマティックでバランスが良い。南部ローヌは平均的なヴィンテージで、シャトーヌフ・デュ・パプ(ボーカステル、ラヤス)やジゴンダスではグルナッシュ主体のスパイシーで果実味豊かなワインが生産されたが、北部ほどの評価はない。
ロワール
ロワール地方は良好なヴィンテージで、サンセール、プイィ・フュメのソーヴィニヨン・ブランがフレッシュでエレガントなスタイルに仕上がった。ヴーヴレ、モンルイ、サヴニエールではシュナン・ブラン主体の辛口から甘口までがバランス良く、特に甘口のコトー・デュ・レイヨンは秀逸な酸と果実味を持つ。シノンやブルグイユのカベルネ・フランは果実味とストラクチャーの調和が良い。ペイ・ナンテのミュスカデは軽快でフレッシュ。
シャンパーニュ
1986年のシャンパーニュは良好な年だが、生産者による品質のばらつきがある。モンターニュ・ド・ランスのピノ・ノワール、コート・デ・ブランのシャルドネ主体のワインはしっかりとした酸を持ち、熟成に適したヴィンテージ・シャンパーニュが生産された。プレステージ・キュヴェも良好だが、1985年や1988年ほどのトップ評価には及ばない。
アルザス
アルザスは天候が不安定で、リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリのワインに成熟度や健全性のばらつきがあった。トップ生産者の一部は良好なワインを生産したが、全体としては平均的なヴィンテージ。
イタリア
イタリアは地域による天候の差があり、ピエモンテ(バローロ、バルバレスコ)のネッビオーロは平均的で、1985年や1989年ほどの評価はないが、熟練生産者がタンニンと酸のバランスが良いワインを生産。トスカーナ(キャンティ・クラシコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ)ではサンジョヴェーゼ主体のワインが果実味と構造の調和が取れ、ボルゲリのスーパートスカンはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー主体で良好な評価を得た。
ドイツ
ドイツは生産量が平年以上で、モーゼル、ラインガウ、ファルツのリースリングが平均的から良好な品質。カビネットやシュペートレーゼは高い酸と果実味のバランスが特徴だが、傑出したヴィンテージではない。
スペイン
スペインは生産地によるばらつきがあるが、リオハとリベラ・デル・ドゥエロでテンプラニーリョ主体の赤ワインが良好。リオハはオークの風味と果実味が調和し、リベラ・デル・ドゥエロは濃厚で力強い。プリオラートのガルナッチャとカリニェナも力強いワインを生産。
ポルトガル
1986年のポートワインは平均的な評価で、ヴィンテージ・ポートの宣言は限定的だったが、シングル・キンタ・ポートは果実味が豊かで凝縮感があり、優れたものは現在も良好に楽しめる。
アメリカ(カリフォルニア)
カリフォルニアのナパ・ヴァレーとソノマ・カウンティは生産者による品質のばらつきがあるが、ナパのカベルネ・ソーヴィニヨン(ラザフォード、オークヴィル)は凝縮感と深みを持ち、シャルドネ(カーネロス)はバランスが良い。ソノマではロシアン・リバー・ヴァレーのピノ・ノワールとシャルドネ、アレクサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨン、ドライ・クリーク・ヴァレーのジンファンデルが良好。全体的には例年並みの評価。
1986年ワイン ヴィンテージワイン
1986年ヴィンテージは全体的に、前年に続き出来の良い年。
特にボルドーは天候にも恵まれ収穫量が過去最高を記録。
収穫量の多さが、ワインの質を薄めると懸念されたが、出来上がったワインはアルコール度が高く、タンニンも豊富、凝縮感のある仕上がりです。
各有名誌の評価で満点をとるワインもあります。
ブルゴーニュも生産量に恵まれ、質の高いワインが多く生産されました。
赤ワインの名産地、コート・ド・ニュイのものは特に評価が高く、また白のグラン・クリュも非常に良い出来だと言われています。