1982年のヴィンテージ作柄・出来・評価
概況
1982年は、特にフランスのボルドー地方にとって歴史的なヴィンテージとされています。温暖で理想的な気候条件に恵まれ、世界的に注目される高品質のワインが生産されました。他の地域でも良好なワインが生産されましたが、ボルドーの成功が際立っています。
フランス
ボルドー
1982年のボルドーは、20世紀後半における最高のヴィンテージの一つと広く認識されています。生育期を通して理想的な天候に恵まれました。春は温暖で乾燥し、順調な開花が行われ、夏は長く、暑く、乾燥しており、ブドウはゆっくりと、しかし完全に熟しました。9月には再び熱波と適度な降雨が訪れ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランのいずれも完熟しました。収穫は9月13日から始まり、健全で非常に熟度の高いブドウを大量に収穫することができました。
この年の赤ワインは、豊かで濃密な果実味と熟した、丸みのあるタンニンが特徴です。若いうちから親しみやすい側面を持ちながらも、その凝縮感とバランスの良さから、長期熟成のポテンシャルを秘めていました。
ブルゴーニュ
1982年のブルゴーニュは、全体として平均的なヴィンテージと評価されています。特に白ワインは赤ワインに比べて成功したとされています。生育期は春の穏やかな天候で始まり、順調な芽出しと開花を迎えました。夏は暑く晴天に恵まれ、9月にも素晴らしいインディアンサマーが到来し、ブドウは十分に成熟しました。収穫量も豊富でしたが、この豊富な収穫量が一部でワインの凝縮感を損なった可能性も指摘されています。
赤ワインに関しては、若いうちは魅力的な果実味を持つワインが多く生産されましたが、長期熟成のポテンシャルを持つワインは限定的でした。白ワインは比較的良好な凝縮感と洗練さを兼ね備えたワインが生産されました。
ローヌ
1982年のローヌ地方は、全体として良好なヴィンテージでした。北部ローヌでは、シラーから造られるワインのトップキュヴェは集中度、力強さ、アルコール度数、構造、深みを備え、素晴らしいものとなりました。南部ローヌでは、一部のワインはやや煮詰まったようなニュアンスが出たり、必要な酸を失って構造や熟成能力が低下したりする問題が見られました。
ロワール
1982年のロワール地方では、平均的なヴィンテージとされています。サンセールやプイィ・フュメといったソーヴィニヨン・ブランは、フレッシュでエレガントなスタイルに仕上がったと見られます。甘口ワインに成功したワインもありましたが、全体としては傑出したヴィンテージではなかったようです。
シャンパーニュ
1982年はシャンパーニュでも非常に良い年で、リッチで熟成能力に優れたワインが生産されました。生育期は理想的な天候に恵まれ、収穫量も豊富でした。
アルザス
1982年のアルザスは、良好なヴィンテージとされています。エレガントで果実味豊かなワインが生産されましたが、多くは長期熟成に必要な深みに欠けていたようです。辛口ワイン、特にリースリングやゲヴュルツトラミネールは、若いうちは楽しめたと考えられます。
プロヴァンス
1982年のプロヴァンス地方に関する具体的なヴィンテージ評価の情報は限定的です。温暖な気候のプロヴァンスでは、全般的にブドウの成熟は良好に進んだと考えられますが、特定の評価を下すのは困難です。
イタリア
ピエモンテ
ピエモンテ州では、1982年は非常に成功したヴィンテージであり、バローロやバルバレスコといったネッビオーロから造られるワインにとっては特に優れた年となりました。生育期を通じて好ましい天候に恵まれ、ブドウは理想的に成熟しました。これにより、力強く、凝縮感があり、複雑味豊かなワインが生産されました。
トスカーナ
トスカーナ州でも、1982年は一般的に非常に良好なヴィンテージでした。春には局地的な雹害がありましたが、その後は長く暑く乾燥した夏が続き、収穫は完璧な条件下で行われました。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノやヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノといった長期熟成型のワインは、リッチで濃密、力強いタンニンを持つものが多く、熟成ポテンシャルに非常に優れていました。
ヴェネト
ヴェネト州における1982年のヴィンテージ評価に関する情報は少ないですが、イタリア全体の好調な傾向から見ると、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラなどにおいても、質の高いワインが生産された可能性があります。
スペイン
リオハ
リオハ地方では、1982年は良好なヴィンテージであったとされています。クラシックなスタイルのリオハの赤ワインが生産されました。テンプラニーリョから造られるワインは、熟成を経て、エレガントで心地よいフィニッシュを持つワインとなっています。
リベラ・デル・ドゥエロ
1982年はリベラ・デル・ドゥエロがDO(原産地呼称)として正式に認定された年であり、地域のワイン産業にとって重要な節目となりました。
ドイツ
1982年のドイツは、傑出したヴィンテージではなかったものの、良好な年でした。リースリングは健全に熟し、モーゼル、ラインガウ、ラインヘッセン、ファルツといった主要産地で、カビネットやシュペートレーゼを中心に良いワインが生まれました。アウスレーゼ以上の高位のプレディカーツワインも生産されましたが、1983年ほどの普遍的な成功ではありませんでした。
ポルトガル
1982年のポルトガルにおけるポートワインは、広くヴィンテージ宣言された年ではありませんでした。一部の生産者のみがヴィンテージポートをリリースしましたが、1983年や1985年といったより著名なヴィンテージに比べると、その評価は控えめです。しかし、個別の生産者によっては良質なポートワインが生産されています。
結論
1982年は、特にフランス・ボルドーにおいて現代ワインの基準を変えたとされる偉大なヴィンテージであり、今なお高く評価されています。他の多くの産地でも良好なワインが生産されましたが、全地域で均一に優れていたわけではなく、ばらつきのある地域も存在します。特にイタリア(ピエモンテ、トスカーナ)、スペイン(リオハ)、ドイツの一部では素晴らしいワインが残っており、選定次第で現在でも楽しめるボトルが見つかる可能性があります。