2020年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス
ボルドー
2020年のボルドーは、2018年、2019年に続く、高品質なワインが広く生産された優れたヴィンテージとして高く評価されています。非常に暑く乾燥した夏と、理想的な条件下での収穫が、優れた品質のブドウをもたらしました。春は温暖で生育は早めに進みましたが、湿潤な時期もあり、ミルデューの懸念が見られました。夏にかけて天候は回復し、非常に暑く乾燥した日が続きました。夏場の暑さは顕著でしたが、適度な海洋性の影響や適時の降雨により、ブドウは深刻なストレスを受けることなく健全に成熟しました。収穫期には理想的な好天が続き、各品種が完璧な熟度に達し、高品質なブドウが豊富に収穫されました。
左岸のメドック地区は、この優れたヴィンテージの恩恵を最大限に受けました。カベルネ・ソーヴィニヨンは見事に成熟し、ワインは深い色合いを持ち、力強く豊かな果実味、複雑で表現力豊かなアロマ、そして豊富で繊細な質感のタンニンを備えています。凝縮感、構造、そしてフレッシュさが非常に高く、長期熟成のポテンシャルは極めて高いです。ポイヤック、サンテステフ、サン・ジュリアン、マルゴーといった主要アペラシオンの多くのシャトーで、優れた赤ワインが生産されました。グラーヴ地区のペサック・レオニャンでも、素晴らしい赤ワインと高品質な辛口白ワインが生産されました。辛口白ワインも、緊張感と複雑さを兼ね備えています。
右岸のポムロールやサンテミリオンでも、メルローが全般的に素晴らしい出来となりました。暑く乾燥した夏がメルローにとって理想的に働き、凝縮感のある豊かな果実味、ビロードのような質感、そして複雑さを備えたワインが生まれました。サンテミリオンの石灰質台地や、ポムロールの優れたテロワールでは、力強く官能的なワインが生産されました。優れたシャトーはいずれも素晴らしいワインを生産し、右岸の素晴らしさを示しました。右岸全体として、左岸と同様に優れたヴィンテージでした。
ソーテルヌおよびバルサックの甘口ワインにとっては、全般的に良好なヴィンテージでした。理想的な貴腐菌(ボトリティス・シネレア)の発生に必要な気候条件が整った地域では、豊かなアロマとバランスの取れた酸を持つ高品質な甘口ワインが生産されました。一部のシャトーでは素晴らしいワインが生まれましたが、全体的には一様に品質が高くなかったという評価も見られます。
ブルゴーニュ
2020年のブルゴーニュは、暑く乾燥した夏に恵まれた、全般的に非常に良好から優れたヴィンテージと評価されています。生育期間は比較的順調に進みましたが、夏場の暑さと乾燥がブドウの糖度と凝縮度を高めました。収量は少ない地域が多い傾向でした。
赤ワイン(ピノ・ノワール)は、全般的に豊かで力強く、肉付きの良いスタイルとなりました。豊かな赤系果実や黒系果実の特徴が際立ち、タンニンは熟しており、丸みのある質感を持ちます。暑さの影響で酸は例年の冷涼なヴィンテージほど高くありませんが、バランスが取れています。比較的早くから楽しめる魅力がありますが、優れた畑のワインは熟成のポテンシャルも秘めています。コート・ド・ニュイやコート・ド・ボーヌの村々で、表現力豊かで豊満な赤ワインが生産されました。果実の凝縮感と骨格が特徴です。
白ワイン(シャルドネ)は、全般的に豊かで表現力豊かな特徴を持ちます。夏場の暑さにより酸は控えめですが、果実の成熟度が高く、より豊かな骨格で芳香豊かなスタイルとなりました。コート・ド・ボーヌの白ワイン産地では、豊かで質感のある白ワインが生産されました。シャブリ地区も暑さの影響を受け、特徴的なシャープさやミネラル感は例年の冷涼なヴィンテージほど際立ちませんが、豊かな骨格で表現力豊かな白ワインが生産されました。マコネ地区も全般的に良好な白ワインが見られました。全体として、ブルゴーニュの2020年は、温暖な気候を反映した、より豊かで豊満なスタイルのワインが生まれたヴィンテージと評価されています。
ローヌ
2020年のローヌ地方は、北部・南部ともに優れたヴィンテージとして広く評価されています。暑く乾燥した夏が理想的に働き、力強く凝縮感のあるワインが生産されました。
北部ローヌでは、主要品種であるシラーにとって非常に優れた年でした。暑く乾燥した夏により、ブドウは完璧に成熟し、凝縮感と複雑さ、そして力強い構造を持つ赤ワインが生産されました。エルミタージュ、コート・ロティ、クローズ・エルミタージュ、サン・ジョセフ、コルナスといったアペラシオンでは、深い色合い、豊かな果実味、そして引き締まったタンニンを備えた、長期熟成可能な素晴らしい赤ワインが生産されました。ヴィオニエから造られるコンドリューなども素晴らしい出来でした。
南部ローヌも全般的に優れたヴィンテージでした。グルナッシュを主体とする赤ワインは、暑く乾燥した夏の影響を受け、力強く豊かな果実味、複雑な風味、そして豊富なタンニンを備えた、フルボディなスタイルとなりました。シャトーヌフ・デュ・パプでは、優れた品質のワインが広く生産され、凝縮感と深みが特筆されます。ジゴンダス、ヴァケイラスといったアペラシオンも全般的に品質が高く、力強いワインが多く見られました。全体として、ローヌの2020年は、北部・南部ともに品質が高く、力強く凝縮感のあるスタイルが特徴の、優れたヴィンテージと評価されています。
ロワール
2020年のロワール地方は、全体として良好なヴィンテージと評価されています。夏場は非常に暑く乾燥しており、ブドウの成熟を助けました。収量は少ない地域が多い傾向でした。
ソーヴィニヨン・ブランの産地であるサンセールやプイィ・フュメでは、全般的により豊かな骨格で、表現力豊かな果実味を持つ白ワインが生産されました。例年のシャープなスタイルとは異なり、よりまろやかな特徴を持つものが多い傾向です。一部で酸が控えめなものも見られました。
シュナン・ブランの産地であるヴーヴレやモンルイ・シュール・ロワールでは、辛口、半辛口、甘口のいずれのスタイルも満足のいく出来でした。夏場の非常に温暖な気候が、特に甘口ワインの生産に好適に働いた地域もありました。
カベルネ・フランを主体とする赤ワイン産地であるシノンやブルグイユでは、全般的に豊かで表現力豊かな赤系果実の特徴を持ち、構造がしっかりしたワインが生産されました。タンニンは熟しており、バランスの取れた仕上がりです。ロワールの赤ワインとしては、比較的力強いスタイルと言えます。全体として、ロワールの2020年は、温暖な気候を反映した、より豊かなスタイルのワインが生産されたヴィンテージと評価されています。
アルザス
2020年のアルザスは、温暖で乾燥した気候に恵まれ、ブドウの成熟が進み、芳香豊かで凝縮感のある白ワインが生産されました。リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、ピノ・ブランなどの品種は良好な成熟度に達し、豊かな果実味とミネラル感を備えた白ワインとなりました。一部の地域では貴腐菌の発生も見られ、甘口ワインも良好な出来となりました。全体として、アルザスの2020年は優れたヴィンテージと評価されています。
シャンパーニュ
2020年のシャンパーニュは、暖かい春と暑い夏に恵まれ、ブドウは健全に成熟しました。収穫は例年より早く始まり、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエいずれも良好な酸と糖度のバランスを持つブドウが収穫されました。フレッシュさと凝縮感を兼ね備えたシャンパーニュが生産される見込みで、全体として良好なヴィンテージと評価されています。
イタリア
2020年のイタリアは、地域によってヴィンテージの評価に差が見られましたが、全般的に良好から優れた品質のワインが生産されました。暑く乾燥した夏が特徴でした。
北部イタリアでは、ピエモンテ州は全般的に優れたヴィンテージでした。特にネッビオーロは、暑く乾燥した夏の恩恵を受け、凝縮感のあるワインが生産されました。バローロやバルバレスコは、力強く表現力豊かなスタイルとなり、長期熟成のポテンシャルを持つものも見られます。ヴェネト州では、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラが優れた品質となりました。フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州やアルト・アディジェ州でも、高品質な白ワインが生産されました。
中部イタリアでは、トスカーナ州は全般的に優れたヴィンテージでした。キャンティ・クラシコやブルネッロ・ディ・モンタルチーノのサンジョヴェーゼは、暑く乾燥した夏に理想的に成熟し、豊かで複雑な、力強いワインが生産されました。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、特に品質が高く評価されており、長期熟成に優れています。ボルゲリなど沿岸部でも、優れたワインが生産されました。
南イタリアも、全般的に良好なヴィンテージでした。暑く乾燥した気候により、ブドウは健全に成熟し、力強く表現力豊かな果実味を持つワインが生産されました。全体として、イタリアの2020年は、温暖な気候を反映した、豊かで力強いワインが生産されたヴィンテージと評価されています。
スペイン
2020年のスペインは、全般的に優れたヴィンテージと評価されています。暑く乾燥した夏が理想的に働き、力強く凝縮感のあるワインが生産されました。
リオハは、優れたヴィンテージでした。暑く乾燥した夏により、テンプラニーリョは理想的に成熟し、力強く構造のしっかりした、長期熟成に非常に適した赤ワインが生産されました。豊かな果実味と複雑なアロマを備え、凝縮感のある特徴を示しています。リオハ・アルタ、リオハ・アラベサ、リオハ・バハの各地域で品質の高いワインが多く見られました。
リベラ・デル・ドゥエロも優れたヴィンテージでした。暑く乾燥した夏がテンプラニーリョ(ティント・フィノ)にとって理想的に働き、力強く凝縮感のある、長期熟成可能なワインが生産されました。
プリオラートでも高品質なヴィンテージでした。カリニェナやガルナッチャは、暑く乾燥した気候に適応し、凝縮感がありながらもバランスの取れたワインとなりました。その他の地域でも品質は高く、全般的に優れたヴィンテージと評価されています。
ドイツ
2020年のドイツは、全般的に良好から非常に良好なヴィンテージと評価されています。暖かく乾燥した夏が特徴でした。
リースリングは、温暖で乾燥した夏の影響を受け、全般的により豊かな骨格で、熟した果実味を持つスタイルとなりました。酸は例年の冷涼なヴィンテージほど高くありませんが、バランスが取れています。モーゼル、ラインガウ、ナーエ、ファルツ、ラインヘッセンといった主要地域で、表現力豊かなリースリングが生産されました。遅摘みワイン(シュペトレーゼ、アウスレーゼ)や甘口ワイン(ベーレンアウスレーゼ、トロッケンベーレンアウスレーゼ)は品質が高く、複雑さと凝縮感を備えています。
全体として、ドイツの2020年は、温暖な気候を反映した、より豊かな骨格のワインが生産されたヴィンテージと評価されています。
アメリカ
2020年のアメリカ、特にカリフォルニア州は、困難なヴィンテージでした。暑く乾燥した夏と、収穫期に発生した大規模な山火事が品質に深刻な影響をもたらしました。
カリフォルニア州では、夏は暑く乾燥しており、ブドウの成熟は順調でしたが、8月と9月に発生した大規模な山火事は、特にナパ・ヴァレーとソノマ・カウンティで深刻な被害をもたらし、収穫への影響やスモーク・テイントの懸念が生じました。山火事の影響を受けた地域では、収穫の遅れやスモーク・テイントのリスクが高まりました。ナパ・ヴァレーやソノマ・カウンティといった主要地域では、山火事の影響を受けなかった畑や、慎重な選果、そしてスモーク・テイントを避けるための技術を用いた生産者からは品質の高いワインが生産されました。特にカベルネ・ソーヴィニヨンは、優れた品質のものが見られますが、火災の影響を受けた地域では品質にばらつきが見られます。一部の生産者は、スモーク・テイントを避けるためにワインを生産しないという判断をしました。
オレゴン州やワシントン州も、全般的に良好なヴィンテージでした。オレゴン州のピノ・ノワールやシャルドネは、満足のいく品質となりました。ワシントン州でも、満足のいく赤ワインが生産されました。全体として、アメリカの2020年は、カリフォルニアは山火事の影響により品質にばらつきが大きく、困難なヴィンテージでしたが、品質の高いワインも生産されたヴィンテージと言えます。
オーストラリア
2020年のオーストラリアは、地域によってヴィンテージの出来にばらつきが見られましたが、全般的に困難なヴィンテージと評価されています。記録的な干ばつと、夏から秋にかけて発生した大規模な山火事が品質と収穫量に甚大な影響を与えました。
南オーストラリア州のバロッサ・ヴァレーやマクラーレン・ヴェール、クナワラといった主要産地を含む広範囲で、干ばつによる収量減と、山火事によるスモーク・テイントの懸念が生じました。ヴィクトリア州やニューサウスウェールズ州も深刻な山火事の影響を受け、多くの地域で品質の確保が困難となりました。西オーストラリア州のマーガレット・リヴァーなど、山火事の影響が少なかった地域では、品質の高いワインが生産されましたが、全体としては困難なヴィンテージでした。多くの生産者がスモーク・テイントを避けるために慎重な選果や醸造を行い、一部ではワインの生産を断念しました。全体として、オーストラリアの2020年は、極端な気候災害により品質と収穫量が大きく影響を受けた、非常に難しいヴィンテージと評価されています。
ニュージーランド
2020年のニュージーランドは、全般的に優れたヴィンテージと評価されています。マールボロ、ホークス・ベイ、セントラル・オタゴといった主要産地では、温暖で乾燥した気候が続き、ブドウは健全に成熟しました。特にソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールは優れた品質となり、豊かな果実味と良好な酸のバランスを持つワインが生産されました。全体として、ニュージーランドの2020年は、フレッシュさと表現力豊かな果実味が特徴の、高品質なヴィンテージと評価されています。
南アフリカ
2020年の南アフリカは、数年続いた干ばつから回復し、全般的に良好なヴィンテージとなりました。ステレンボッシュ、フランシュホーク、スワートランド、エルギン、ヘルマヌスといった主要産地では、適度な雨と温暖な気候により、ブドウは健全に成熟しました。シュナン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーといった主要品種は良好な品質となり、バランスの取れた、表現力豊かなワインが生産されました。全体として、南アフリカの2020年は、フレッシュさと果実味が調和した、良好なヴィンテージと評価されています。